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本ブロックが抗弁となるブロック

別口債務の存在

ダイアグラム

要件同一の債権者に対する別口債務が存在すること

参考文献:岡口基一「要件事実マニュアル総論民法2第5版」671頁

関連条文: 民法第473条

民法 第473条 (弁済)

債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅する。

ブロック:「別口債務の存在」について

要件事実説と再抗弁説
①別口債務の存在を弁済の抗弁に対する再抗弁と位置付けるか、または、②別口債務の不存在を弁済の抗弁の要件事実と位置付けるか、争いがある。一方で、③原告(債権者)の主張立証により別口債務の存在が明らかになった場合に限り、別口債務ではなく当該債務に充当されたことを主張立証すべきであるとする見解もある。
なお、以下の判例は①説の論拠とされるが、③説に立っているとみる余地もある。
「 本件のごとく弁済の充当が問題となつた場合に、債権者たる被上告会社において、債務者たる右上告人が、被上告会社に対し本件手形金債務の外に、これと同種の目的を有する本件公正証書による債務を負担することを主張し、立証したときは、上告人らは、具体的に弁済充当の関係を主張し、立証すべき義務を負うものと解すべき 」(最二小判昭和35年10月14日:裁判所裁判例検索
一方で、以下の判例は、別口債務の存在が弁論主義の対象である再抗弁事実ではない趣旨の判示をしている。
「上告人において、訴外D の被上告人に対する弁済を主張するについては、訴外Dにおいて債務の履行に適合 する給付をしたことのほか、右給付が本件手形金債権によつて担保された原判示の原因債権に対応する債務の履行としてなされたものであることの二つの点を立証する責務を負うものであるところ、原判決は、その措辞に正鵠を欠く点はあるが、要 するに、Dが被上告人に支払つた原判示の金員は、Dにおいて別に被上告人に対し て負担していた五〇万円の借入金債務の内入れ弁済として支払つたものであることを認定することにより、上告人の抗弁は、後者の点についての立証を欠くものとしてこれを排斥したものと認められる。してみれば、原判決にはなんら弁論主義違背 のかどはないものというべきである。 」最三小判昭和46年6月29日集民103号319頁(裁判所裁判例検索) 
(参考:「改訂紛争類型別の要件事実」9頁、岡口基一「要件事実マニュアル総論民法2第5版」670頁)

要件:「同一の債権者に対する別口債務が存在すること」について