要件事実データベース

賃貸借契約の終了に基づく不動産明渡請求(土地)

ダイアグラム

要件土地について賃貸借契約を締結したこと
要件賃貸借契約に基づいて土地を引き渡したこと
要件賃貸借契約が終了したこと

参考文献:司法研修所編「新問題研究要件事実」123頁

本ブロックに対して抗弁となるブロック

関連条文: 民法第601条

民法 第601条 (賃貸借)

賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。

ブロック:「賃貸借契約の終了に基づく不動産明渡請求(土地)」について

訴訟物の選択
「XがYに対し不動産の明渡しを求める場合、訴訟物としては所有権侵害を理由とする物権的請求権である不動産明渡請求権と賃貸借契約の終了を理由とする債権的請求権である不動産明渡請求権が考えられます。……Xが不動産の所有者であり、また賃貸人でもあるという場合には、理論上は、いずれの請求権を選択することも可能ですが、このような場合は、賃貸借契約の終了を理由とする債権的請求権が選択されるのが一般的です。」(司法研修所編「新問題研究要件事実」122頁)
終了原因と訴訟物
「賃貸借契約の終了に基づく不動産明渡請求において終了原因が複数ある場合、個々の終了原因ごとに訴訟物を考えるべきかどうかについて、次の見解の対立があります。
ア 多元説 終了原因ごとに訴訟物が異なるとする見解です。
イ 一元説 1個の賃貸借契約に基づく明渡請求である限り、終了原因が複数あっても、訴訟物は常に1個であり、個々の終了原因は原告の攻撃方法にすぎないとする見解です。」
「賃貸借契約の終了に基づく明渡請求権は、賃貸借契約自体の効果として発生する賃借物返還義務に基礎をおくものであって、解除、解約の申入れ等の終了原因の効果として発生するものではありません。このような理由により一元説が通説的見解であって、実務の大勢もそのように考えています。
(司法研修所編「新問題研究要件事実」122頁)

要件:「土地について賃貸借契約を締結したこと」について

賃貸借契約の成立要件
民法601条によると、賃貸借契約の成立のために必要な要件は、①目的物を一定期間使用・収益させること、②その対価として賃料を支払うこと、③契約終了時に目的物を返還すること、についての合意であることがわかる。したがって、「賃貸借契約を締結したこと」を主張する場合には、①乃至③の事実を主張・立証する必要がある。(参考文献:司法研修所編「新問題研究要件事実」124頁)

借地借家法との関係
「賃貸借契約の目的物が建物である場合には、賃貸借契約の締結を主張すれば目的物が建物であることが明らかになりますから、当然に借地借家法又は借家法の適用を受けることになります。したがって、賃貸人である原告が期間満了を理由として目的物の明渡を求める場合には、請求原因となる事実を定めるについて当然に特別法である借地借家法まてゃあ借家法の規定を考慮に入れる必要があります。しかし、賃貸借契約の目的物が土地である場合には、賃貸借契約の締結を主張しただけでは、借地借家法又は借地法において問題となる建物所有目的の合意(借地借家法1条、借地法1条)に該当する事実が明らかになりませんから、借地借家法等の適用を受けることにはなりません。したがって、この場合は、請求原因となる事実を考えるに当たって、当然には借地借家法等の適用を考慮に入れる必要はありません。」(司法研修所編「新問題研究要件事実」124頁)

要件:「賃貸借契約に基づいて土地を引き渡したこと」について

契約に基づく目的物の引渡し
賃貸借契約は諾成契約であり、当事者の合意だけで成立するが、賃貸借契約の目的物の返還を請求する場合は、賃貸借契約に基づいてその目的物を使用収益可能な状態に置いていたこと(=目的物を引渡していたこと)が前提になるため、賃貸借契約の終了に基づく返還請求を行う場合には本要件に該当する事実の主張・立証が必要となる。(参考文献:司法研修所編「新問題研究要件事実」125頁)
相手方が占有していること
「賃貸借契約の終了に基づく土地明渡請求の場合には、賃借人は、賃貸人に対して、賃貸借契約上の義務として、契約が終了したときには賃貸借契約の目的物として引渡しを受けた土地を返還する義務を負っています。したがって、仮に、賃借人が第三者に賃借権を無断譲渡したりして、借りた不動産を実際に占有していなかったとしても、賃借人はその土地の返還義務を免れることはできないというべきです。このため、賃借人が借り受けた土地を占有していることは、賃貸借契約の狩猟に基づく土地明渡請求権の発生要件ではないと解されます。」(司法研修所編「新問題研究要件事実」125頁)

要件:「賃貸借契約が終了したこと」について

返還請求権の発生時期
民法601条は「引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還すること」を賃貸借契約の成立要件として定めており、また、賃貸人は賃貸借契約の存続期間中は賃借人に目的物を使用収益させる義務を負うため、賃貸人が賃借人に対して目的物の返還を求めるためには賃貸借契約の終了が必要となる。(参考文献:司法研修所編「新問題研究要件事実」126頁)