「即時取得における無過失とは、動産の占有を始めた者において、取引の相手方がその動産の権利者であると信ずるにつき過失がなかったことをいうとされています」(司法研修所編「新問題研究要件事実」142頁)
「 民法一九二条にいわゆる「善意ニシテ且過失ナキトキ」 とは、動産の占有を始めた者において、取引の相手方がその動産につき無権利者で ないと誤信し、且つかく信ずるにつき過失のなかつたことを意味する」((最三小判昭和26年11月27日民集5巻13号775頁:
裁判所裁判例検索)
「 右法条にいう「過失なきとき」とは、物の譲渡人である占有者が権利者たる外観を有しているため、その譲受人が譲渡人にこの外観に対応する権利があるものと誤信し、かつこのように信ずるについて過失のないことを意味するものである」((最一小判昭和41年6月9日民集20巻5号1011頁:
裁判所裁判例検索))
「この場合の過失の基準時は、Xの占有取得時です。したがって、それ以後の事実を主張することは意味がありません。」(司法研修所編「新問題研究要件事実」142頁)
「過失の有無は、前主の処分権限について取得者に疑念が生じる事由があったかどうか(不審事由の存在)、その疑念があるときは、その疑念を解明すべくどのような措置を講ずべきであったかどうか(調査確認義務の存在と内容)、取得者がその措置を講じたかどうか(調査確認義務の懈怠)にかかります。その際には、取引の実情ないし慣行、商慣習、従来の当事者間の諸関係などが総合的に考慮されなければなりません。」(司法研修所編「新問題研究要件事実」142頁)