「民法188条は『占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定する。』と規定しており、処分権があると称して取引をする動産の占有者には、その処分権があるものと推定されます(法律上の権利推定。……)ので、動産の占有取得者は、前占有者に所有権があると信ずることについて過失がないものと推定されることになります。」(司法研修所編「新問題研究要件事実」137頁)
なお、裁判例においても、(民法192条)「 にいう「過失なきとき」とは、物の譲渡人である占有者が権利者 たる外観を有しているため、その譲受人が譲渡人にこの外観に対応する権利があるものと誤信し、かつこのように信ずるについて過失のないことを意味するものであ るが、およそ占有者が占有物の上に行使する権利はこれを適法に有するものと推定 される以上(民法一八八条)、譲受人たる占有取得者が右のように信ずるについて は過失のないものと推定され、占有取得者自身において過失のないことを立証することを要しないものと解すべきである。」((最一小判昭和41年6月9日民集20巻5号1011頁:
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以上より、即時取得を主張する者は、⑥占有開始が「過失がない」状態でなされたこと(無過失)を主張・立証する必要はなく、相手方が占有取得者に過失があることを主張・立証すべきことになる。