要件事実データベース

所有権に基づく所有権移転登記抹消登記手続請求

ダイアグラム

要件自己が本件不動産を所有していること(もと所有)
要件本件不動産について相手方名義の所有権移転登記が存在すること

参考文献:司法研修所編「新問題研究要件事実」85頁

本ブロックに対して抗弁となるブロック

関連条文: 民法第202条第1項

民法 第202条 (本権の訴えとの関係)

占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。

2 占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。

ブロック:「所有権に基づく所有権移転登記抹消登記手続請求」について

登記請求権
「登記請求権については、①物権的登記請求権(現在の実体的な物権関係と登記が一致しない場合に、この不一致を除去するため、物権そのものの効力として発生する登記請求権)、②債権的登記請求権(当事者間の契約ないし特約の債権的効果として発生する登記請求権)、③物権変動的登記請求権(物権変動の過程、態様と登記とが一致しない場合に、その不一致を除去するために、物権変動の過程を登記面に忠実に反映させるべきであるとする要請に基づいて認められる登記請求権)の3類型に整理するのが一般的です。」(司法研修所編「新問題研究要件事実」87頁)
「相手方の登記の存在は、占有以外の方法による物権の侵害と考えることもできます。そのように考えれば、物権的登記請求権は、妨害排除請求権に当たると解されます。」(司法研修所編「新問題研究要件事実」88頁)
なお、物権的請求権については所有権に基づく土地明渡請求も参照。
訴訟物
本ブロックを裁判で請求する場合の訴訟物は「所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記抹消登記請求権」となる。

要件:「自己が本件不動産を所有していること(もと所有)」について

所有権の構造
「自己(X)が本件土地を所有していること」というのは、「現在(口頭弁論終結時)において、Xがその土地を所有していることです。しかし「現在のX所有」を立証することは困難ですから、過去のある時点におけるXの所有権取得原因を主張・立証することになります。いったん取得した所有権は、喪失事由が発生しない限り、現在もその者に帰属していると扱われるからです。」(司法研修所編「新問題研究要件事実」59頁)
所有権と権利自白(もと所有)
「所有権については、権利自白が認められるものと考えられていますから、現在若しくは過去の一定時点におけるXの所有又は過去の一定時点におけるXの前所有者等の所有について権利自白が成立する場合には、Xは、これらの時点におけるX又はその前所有者等による所有が認められることを前提として、請求原因①(注:「自己が本件土地を所有していること」)の主張・立証をすることができることになります。この場合の、Xやその前所有者等の過去の一定時点における所有を「もと所有」と表現しています。」(司法研修所編「新問題研究要件事実」60頁)

要件:「本件不動産について相手方名義の所有権移転登記が存在すること」について

登記の推定力との関係
登記に法律上の推定力(所有権移転登記に、所有権の所在を法律上推定する効力を認めること)を認める見解によれば、「本件不動産について相手方名義の所有権移転登記が存在すること」を主張することによって、相手方の現在の所有権が法律上推定されることになり、本請求をするにあたって”相手方の現在の所有権の不存在”を主張・立証しなければならないことになる。しかし、下記裁判例は、”前所有名義人が現所有名義人に対し当該所有権の移転を争う場合”について、登記の推定力を認めておらず、”相手方の現在の所有権の不存在”は本請求の要件とならない。(参考文献:司法研修所編「新問題研究要件事実」90頁)
「一般の場合には、登記簿上の不動産所有名義人は反証のない限りその不動産を所有するものと推定すべきである(昭和三三年(オ)第二一四号同三四年一月一八日第一小法廷判決、民集一三巻一頁)けれども、登記簿上の不動産の直接の前所有名義人が現所有名義人に対し当該所有権の移転を争う場合においては右の推定をなすべき限りでなく、現所有名義人が前所有名義人から所有権を取得したことを立証すべき責任を有するものと解するのが相当である。」(最三小判昭和38年10月15日民集17巻11号1497頁:裁判所裁判例検索