①身分関係および従前の物権変動における役割等から従前の物権変動の当事者に近接した地位とみられる事情、②第三者となった取引の動機・目的等、を考慮して背信的悪意者にあたると判断された裁判例。
「上告人A2は、上告人A1と親族で、同上告人の主宰する株式会社の取締役の職にあるなどの関係にあり、同上告人の意を受けて被上告人らとの間に本件土地建物の売買契約解消の交渉をしたことがあつたこと、上告人A2は、被上告人らが本件土地建物を上告人A1から買い受け、すでに本件土地上に鉄筋コンクリート造旅館をも新築して本件土地を占有使用しており、上告人A1と訴外Eほか四名との間の本件土地に関する別件訴訟も実質上被上告人らのために追行されているなどの事情を知りながら、被上告人らに秘し、みずから右訴外人らと交渉して、訴外人らの登記の抹消、示談金の支払と訴訟の取下を内容とする示談契約を成立させ、これと前後して、上告人A1との間に土地交換契約を締結
して本件土地所有権を取得しその旨の登記を経由したものであること、上告人A2が右交換契約を締結した目的につき、首肯するに足りる理由が認められず、その目的は、本件土地につき被上告人ら名義の登記がなされることを妨げ、被上告人らの本件土地所有権取得の効果を対抗要件の欠缺により失わしめるにあつた……右事実関係のもとにおいては、上告人A2は、いわゆる背信的悪意者として、被上告人らの本件土地所有権取得についての登記の欠缺を主張する正当な利益を有しない」(最一小判昭和48年4月12日集民109号79頁:
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