要件事実データベース

所有権に基づく抵当権設定登記抹消登記手続請求

ダイアグラム

要件自己が本件不動産を所有していること(もと所有)
要件本件不動産について相手方名義の抵当権設定登記が存在すること

参考文献:司法研修所編「新問題研究要件事実」109頁

本ブロックに対して抗弁となるブロック

関連条文: 民法第202条第1項

民法 第202条 (本権の訴えとの関係)

占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない。

2 占有の訴えについては、本権に関する理由に基づいて裁判をすることができない。

ブロック:「所有権に基づく抵当権設定登記抹消登記手続請求」について

物権的請求権
「民法には、所有権に基づく物権的請求権そのものについての規定はありません。しかし、物に直接の支配を及ぼすことを権利内容とする所有権の性質上、その権利内容を実現するために物権的請求権が認められるのは当然と考えられること、占有権については占有訴権が認められており、この点からもこれより強力な物権的請求権を認めるのが相当であること、民法202条が占有の訴えのほかに本件の訴えを認めていることに照らし、所有権について物権的請求権が発生するものと解されています。」(司法研修所編「新問題研究要件事実」55頁)
物権的請求権の種類
「所有権に基づく物権的請求権について、通説は、占有訴権における占有回収の訴え(民法200条)、占有保持の訴え(同法198条)及び占有保全の訴え(同法199条)に対応して、①他人の占有によって物権が侵害されている場合の返還請求権、②他人の占有以外の方法によって物権が侵害されている場合の妨害排除請求権、③物件侵害のおそれがある場合の妨害予防請求権の3類型に分類しています。」(司法研修所編「新問題研究要件事実」55頁)
訴訟物
本ブロックを裁判で請求する場合の訴訟物は「所有権に基づく妨害排除請求権としての抵当権設定登記抹消登記請求権」となる。

要件:「自己が本件不動産を所有していること(もと所有)」について

所有権の構造
「自己(X)が本件土地を所有していること」というのは、「現在(口頭弁論終結時)において、Xがその土地を所有していることです。しかし「現在のX所有」を立証することは困難ですから、過去のある時点におけるXの所有権取得原因を主張・立証することになります。いったん取得した所有権は、喪失事由が発生しない限り、現在もその者に帰属していると扱われるからです。」(司法研修所編「新問題研究要件事実」59頁)
所有権と権利自白(もと所有)
「所有権については、権利自白が認められるものと考えられていますから、現在若しくは過去の一定時点におけるXの所有又は過去の一定時点におけるXの前所有者等の所有について権利自白が成立する場合には、Xは、これらの時点におけるX又はその前所有者等による所有が認められることを前提として、請求原因①(注:「自己が本件土地を所有していること」)の主張・立証をすることができることになります。この場合の、Xやその前所有者等の過去の一定時点における所有を「もと所有」と表現しています。」(司法研修所編「新問題研究要件事実」60頁)

要件:「本件不動産について相手方名義の抵当権設定登記が存在すること」について

登記保持権原
登記の推定力は事実上の推定であるとされている(所有権に基づく所有権移転登記抹消登記手続請求 も参照)。したがって、「相手方名義の抵当権設定登記について正当な権原があること」(登記保持権原の存在)は、相手方が主張・立証すべき抗弁となり、抵当権設定登記の抹消を求める側が主張・立証すべき事項ではない。
妨害の存在
物権的登記請求権(妨害排除請求権)の行使のためには、現在時点における妨害の存在が必要である(なお、妨害の時的要素について所有権に基づく土地明渡請求 も参照)。
現在時点における妨害の存在として相手方名義の抵当権設定登記が存在することを主張・立証する必要がある。
(参考文献:司法研修所編「新問題研究要件事実」114頁、90頁、63頁)